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視聴覚教育時報 平成25年2月号(通巻677号)index

◆視聴覚教育とともに四十年/冨士池 長雄(埼玉県視聴覚教育連絡協議会長)

◆「視聴覚センター・ライブラリー一覧〈平成24年度版〉」を読む〜視聴覚センター・ライブラリーの現状と傾向

◆平成24年度 全視連講師派遣事業 事業実施報告

◆第11回全国こども科学映像祭 入賞作品決まる

◆視聴覚教育とともに四十年/冨士池 長雄(埼玉県視聴覚教育連絡協議会長)

 私事で恐縮であるが、今年で教職を定年退職して三年目になった。現在は、再任用の教員として新しく採用された教師が在籍する学校に赴き初任者指導をしている。

ある学校の教材室に入って探し物をしていた折、戸棚の奥にあった16ミリ映写機とスライド投影機を発見した。思わず懐かしくなり、自身がこの機器を使って授業をしていた頃を思い出した。若かりし頃の私は、当時の時代のなかで視聴覚教育の先端を走り機器の効果的な活用を探る研究会に参加して、仲間と共に機器に合わせた教材・教具の開発や適切な指導方法を探る研究を進めていた。

より新しい機器への好奇心とその活用が、児童生徒の学習活動の成果を最大限発揮するものと意気込んでいた。 しかし、研修から得たのは斬新な機器活用より、教材開発にかける教師の思いが強いほど学習の成果は高くなるということであった。

 しかし、その機器も時代とともに移り変わり、教科の学習で多くの子どもたちの興味・関心を高めた時もあれば、時代の流れのなかで役目を終えて姿を失うものも少なくなかった。私が教職に就いた頃の教育機器は、VTRやOHPであり、各教室にはTVとスクリーンが設置されていた。先進的な学校にはスタジオを備えた放送室やLL教室等々が整備されていた。

時代が移り、現在は高度情報化時代と言われ、学校現場ではコンピュータを中心とした教育メディアが整備され電子黒板やwebカメラ等の活用、またインターネットでの情報収集や電子メールの送受信など、ICTを活用した学習活動が主流になっている。私が担当する初任者もコンピュータでの実践報告が義務付けられ、そのデータ作成に再任用教員として指導・支援している。

 このように四十年の年月を経ての視聴覚教育の推進であるが、その教材を開発し機器を扱うのも人ならば、それを受けるのも人であり、その間に信頼関係がなくては成果が得られない。どんなに機器が変化しても視聴覚教育の推進は、昔も今も人間同士の信頼のなかで成りたっているのである。

◆「視聴覚センター・ライブラリー一覧〈平成24年度版〉」を読む〜視聴覚センター・ライブラリーの現状と傾向

 毎年、各都道府県教育委員会及び視聴覚教育関係施設の協力を得て、一般財団法人日本視聴覚教育協会が刊行している「視聴覚センター・ライブラリー一覧」が、今年もまとめられた。
 本稿では、平成24年度実施した調査資料(4月1日現在)を基に、今日のICT社会における視聴覚センター・ライブラリーの現状と傾向を、データを通して読み取ってみた。

■視聴覚ライブラリー設置数について
 視聴覚センター・ライブラリーの設置数は、年々減少していると言われている。まず、視聴覚センター・ライブラリーの設置状況について見てみよう。平成23年版の施設総数が644施設であったのに対して、平成24年版には622施設と22施設の微減状況となっている。さらに、都道府県別と市町村別(含む任意設置及びその他)に分けてみると、次のようになる(表1)。
 この減少傾向は、平成年間に刊行された、「視聴覚センター・ライブラリー一覧」のデータと比較することによっても読み取ることができる。
 表2は、平成15年版、20年版と、24年版を比較したもので、前述した施設減少傾向が長年にわたって続いていることが読み取れる。
 このような傾向は、直接間接を問わず、メディア環境の変化や平成の大合併等の社会的変化から、アナログメディア中心に活動を展開してきた視聴覚センター・ライブラリーの存続意義そのものが問われ、組織改編や廃止等につながってきている。むろん、組織替えや廃止の原因や事情は、多岐にわたり、軽々に論ずることはできない。

■視聴覚センター・ライブラリーの財政実績額
 各都道府県別の市町村単位の財政的実績額(平成23年度) を見てみると、47都道府県の総額1,561,030(千)円となっており、この数値は各市町村の財政的状況等により、一概に論ずることは難しいが、熊本はじめ鹿児島や千葉、広島、山形、愛知、秋田、新潟、岩手等9県が4,000万円を超える実績を示し上位を占めている。
 しかし、もう少しデータを丁寧に見てみると、意外な数値が浮かび上がってくる。
 それは、一応の実績額を持つ都道府県でも、実績額ゼロという市町村単位の視聴覚ライブラリーが存在することである。多少の有無は別として、実績額ゼロという市町村視聴覚ライブラリーが存在する県は40県に上り、すべての市町村視聴覚ライブラリーが実績額を持つ都道府県は7県に過ぎない。

■視聴覚教材の保有と貸出状況
 視聴覚センター・ライブラリーの基本的な機能のひとつとして教材貸出機能があげられる。今日的な課題はともかく、現実に機能している16ミリ映画や録画教材の保有数と貸出数を関連付けながら読み取ってみたい。

(1)市販教材の保有状況
 念のため、4年前のデータと比較してみたが、いずれも減少傾向にあり、16ミリ映画については、以前からの保有数が視聴覚センター・ライブラリーの減少と合った数値のように思われる(表3)。
 しかし、録画教材の減少も大雑把に見ると、10分の1程度減少しているのは、16ミリ映画と同じ理由なのだろうか。


(2) 自作録画教材の保有数
 視聴覚センター・ライブラリーの大きな機能として、教材の制作機能がある。
 視聴覚センター・ライブラリーとして計画的に地域に役立つ教材を自作したり、地域や学校等と連携しての教材制作の現状をグラフ化してみた(表4)。

市販16ミリ映画や録画教材の減少傾向が続く中で、自作録画教材の保有数は、伸びていることがわかる。つまり、視聴覚センター・ライブラリー数が減っているのに自作録画教材数は数値的には増えている。しかも、今日のICT化社会とフィットした形で、デジタルコンテンツ保有数が伸び始めている。ただ、自作録画教材保有数に関しては、施設規模等も関係するだろうが、視聴覚センター・ライブラリー間に格差があるようだ。

 例えば、自作録画教材保有数については、宮城、山形、栃木、東京、神奈川、富山、愛知、兵庫、鹿児島の9都県が1,000本から4,000本強保有している。
 これらの数値は、上記の県内でも、一部の視聴覚センターやライブラリーが保有しているケースが多くみられる。
 例えば、富山県の場合、富山県民生涯学習カレッジ富山県映像センターが保有しており、兵庫県においても、総保有数3,071本中、篠山市視聴覚ライブラリーが2,571本、加古川市立視聴覚センターが286本保有している。
 デジタルコンテンツも全保有数のほぼ60%にあたる3,138本を保有している鹿児島県の場合、その大半を、鹿児島市立学習情報センターと、かごしま県民大学中央センター、霧島市メディアセンターの3施設に絞られている。

(3)市販教材の利用傾向
 視聴覚センター・ライブラリーの教材保有の傾向は前記のデータから読み取れるが、それらの教材が、どの程度貸し出されているかが表5である。表からわかるように、市販録画教材がおよそ89%を占め、市販16ミリ映画は11%となっている。
 表6表7には、市販16ミリ映画貸出数が300本以上の都道府県と、市販録画教材貸出数2,900本以上の都道府県を取り上げて記載した。
 貸出数は、各都道府県内に設置されている視聴覚センター・ライブラリー数や、施設の規模、貸出数の算出方法によっても異なってくる場合もあるので単純に比較することは難しい。


■視聴覚センター・ライブラリーのIT化への対応
 さて、メディア環境の変化、IT化の進む中で、視聴覚センター・ライブラリーは、どのように対応しているのだろうか。いくつかの観点から調査が行われたので、デジタルアーカイブ化、教材配
信状況、そしてホームページの開設の3項目から読み取ってみた。

(1)自作教材のデジタルアーカイブ化
 従来の自作教材の多くは、古くは8ミリフィルム、ビデオテープ等で制作され、保有し貸し出しが行われてきた。
 しかし、近年のメディア環境の変化に伴い、アナログ自作地域教材の利用が難しくなりつつあり、地域を学ぶ貴重な映像資料として、デジタルアーカイブ化して、今日の学習はむろん、将来の学習資料として、総数6,122本がCDまたはDVD化されている。表8では、都道府県ごとのデジタルアーカイブ化数をまとめてみた。


 デジタルアーカイブ化数が10本以上の都道府県を表にしたものだが、兵庫県と富山県の数値が1,000本台と突出している。それぞれ、兵庫県では篠山市視聴覚ライブラリーの1,634本が兵庫県の大部分の数値となっており、富山県も富山県民生涯学習カレッジ富山県映像センターの1,242本が富山県の大半の数値となって表れている。その逆に、この表には入らない、デジタルアーカイブ化ゼロの都府県が21あり、ゼロに近い数値の都道府県も加えると全施設の半数以上を占めている。

(2) 教材配信の現状
 デジタルアーカイブ化された自作映像資料や、地域教材等を、インターネットをはじめケーブルテレビ等を活用して配信している施設はどのくらいあるのか、その状況を見てみた。配信総数は、23,092本、配信事業を行っている施設を有している都道府県は16都道府県となっているが、その内訳は表9のようになっている。


内訳を見てみると、総配信数のおよそ77%の本数を、鹿児島県の鹿児島市立学習情報センターと、かごしま県民大学中央センターが配信していることが読み取れる。また、富山県の、富山県民生涯学習カレッジ富山県映像センター、新潟県の長岡市視聴覚センター、愛知県生涯学習推進センター、兵庫県の篠山市視聴覚ライブラリー等が高い数値を示している。しかし、デジタルアーカイブ化本数ゼロ回答の施設は、ネット配信数もゼロという所が多い結果を示している。

■視聴覚センター・ライブラリーの講習・研修機能の状況
 視聴覚センター・ライブラリーの大きな機能として、講習や研修機会の提供ということがあげられている。従来から、講習・研修会の実施状況の調査については、視聴覚機器に関する講習・研修会とIT関連の講習・研修会に分けて調査を行ってきたが、その結果と推移について見てみた。まず、平成24年版での講習・研修会の実施総数を見てみると、視聴覚機器関連が1,035回、IT関連が1,675回となっている。そこで、平成15年版、同20年版と比較してみた(表10)。


 平成15年版のIT関連の講習・研修会の実施総数と比較して、20年版そして24年版の実施総数が2分の1程度に減っていることがわかる。
 ひとつの見方として視聴覚センター・ライブラリー数の推移と類似しているように読み取れるが、一方、視聴覚機器に関する講習・研修会の実施総数は、約10年間ほとんど変化せずに実施されていることが読み取れる。各都道府県別の講習・研修会実施数について見てみると次のようになっている(表11、12)。


 視聴覚機器、IT関連とも、10回以上実施している都道府県を表にしてみたが、研修機能が充実している都道府県設置の視聴覚センター等が多くの研修機会を設けているが、視聴覚機器関連の講習・研修会実施数では栃木県が全体実施総数の2分の1に相当する講習・研修会数を記録している。また、IT関連の講習・研修会では兵庫県が407回実施している。

■終わりに
 本稿では、「視聴覚センター・ライブラリー一覧」に記載されている、組織や運営の現状、事業としての教材保有や貸出状況をデータから読み取ってみた。さらに、デジタルアーカイブ化や教材のネット配信等の状況等を数的に把握することを通じて、視聴覚センター・ライブラリー事業のIT化の現状をまとめてみた。

(全国視聴覚教育連盟 専門委員長 松田 實)

◆平成24年度 全視連講師派遣事業 事業実施報告

 各加盟団体が例年実施する研究会・研修会に対して“全視連指導協力者会議≠フ学識経験者の中から、要請に応じて講師の派遣やその謝金を支援する標記事業には、今年度4か所(岩手県、盛岡市、新潟県、千葉県)より申請があった。今号では新潟県のようすを紹介する。

メディア研修特別講演会
「映像で学ぶ文化遺産の旅─映像に感動して学び、旅で歴史をふり返る─」

新潟県立生涯学習推進センター

■実施期日
平成24年11月22日(木)  13時30分〜16時00分

■趣旨
 映像を手がかりに文化や歴史に触れることへの社会的関心が高まっている現状を踏まえ、映像と学びのあり方について学習する機会を設け、映像を通して学ぶ楽しさや意義について理解を深める。

■参加状況
 参加者 59名
 ・三条市生涯学習課1名・公立学校教員2名・地域教育コーディネーター1名 ・図書館関係者1名・ボランティア関係者1名・一般53名

■講師・講演テーマ
江戸川大学名誉教授 市川 昌 氏
「映像で学ぶ文化遺産の旅│映像に感動して学び、旅で歴史をふり返る│ 」

■日程と内容
 13時10分 受付
 13時30分 講演会前半
 14時15分 休憩
 14時30分 講演会後半
 15時50分 質疑
 16時00分 講演会終了

■講演内容の要旨
 映像で学ぶとき、テレビやインターネットなどのメディアが伝えるメディアの情報を正しく理解するためのリテラシー(識字能力)を高めておくことが必要。歴史や文化のもつ本質を学び「正確に、丁寧に、こころを込めて視る」ことがメディアリテラシーとなる。視聴覚教育で必要なのは「多く見る」ことでなく、「ていねいに注意深く視る」「物事の本質を覚るための方法」を児童生徒に教えること。

 情報教育で機器の操作やソフトの作り方、セキュリティを教えるとともに、文化遺産を継承するために幼い時から博物館、美術館で本物の価値に触れさせたい。私の指導している講座では、NHKテレビ番組をもとに映像で感動して学び、情報を暮らしに生かすための方法を学ぶ機会を設けている。ドラマにある虚構性(Fiction)と史実の差異がある場合は、その意図を考えることを通して学習者の知的好奇心を高め、発展学習としてネット検索、原作購読、社会見学へと導く教材となる。

 世界遺産に関心のある方々が観光のために旅をして、初めて文化遺産の価値をそこに住む現地の住民が理解してくれることが多い。世界遺産を守るためにも、多くの方々に関心をもってもらいたい。

■成果
 映像を通した学びの大切さや文化に対する見方について、参加者の意識の高まりがみられた。事前に担当者が市川先生の講座に参加し、打合せ等を行ったことで、講演会の趣旨や対象者について配慮いただき、分かりやすく丁寧な講演をしていただいた。

■課題
・「もっと多くの文化遺産の映像を見たかった」等、文化遺産に対する受講前の期待が高かった参加者からは、そのような要望を得た。チラシ等の表現内容を検討する
・毎年8月末に新潟県内のAVL関係者の研修会を開催している。全視連講師派遣事業を生かして講演会を実施できると、視聴覚教育関係者に対してよい研修機会になると感じた。

◆第11回全国こども科学映像祭 入賞作品決まる

 (一財)日本視聴覚教育協会主催による第11回全国こども科学映像祭の入賞作品が決まり、去る2月9日(土)日本科学未来館みらいCANホールにおいて表彰式・上映会及び記念講演が行われました。
 この全国こども科学映像祭は、こどもたちの科学への関心を喚起し、カメラの目を通して科学の楽しさ・素晴らしさを理解させ、こどもたちの ”科学する心“を育むことを目的とした世界でも珍しいこどもたち自身が作った映像作品のコンクールで、今年で11回目となります。
 毎年優れた映像作品が出品され話題となっていますが本年度は次のような作品が受賞しました。


受賞者と講演のNHKエンタープライズ菅山氏との 記念写真

○文部科学大臣賞(最優秀作品賞)小学生部門
【海の掃除機 アサリの力 パートV】〈写真1〉
内田悠雅、内田雅之(父)
岡崎市立大樹寺小学校5年(愛知県)

同 中学生部門
壁を登る動物の研究Uくっつくけどもはがれやすい粘着の秘密を探る】〈写真2〉

三原中学校サイエンスクラブ 沖山遼斗・土屋文彦
八丈町立三原中学校2年(東京都)

○優秀作品賞 小学生部門
【ジャコウアゲハの謎】

谷中和樹、中濱春樹(野外活動指導員)
姫路市立古知小学校5年(兵庫県)
【栃木市で増えてきたヌマガエル】
栃木第四小学校6年 ヌマガエル研究班、中島宏和(担任)
栃木市立栃木第四小学校6年(栃木県)

同 中学生部門
【メダカの受精と受精卵の孵化まで】

中村愛佳
浜田市立第三中学校3年(島根県)

 その他、佳作には2作品が、特別賞には1作品が入賞しました。

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