視聴覚教育時報 平成25年10月号(通巻681号)

私のことば/I×C×T

豊嶋 基暢(文部科学省生涯学習政策局情報教育課長)

 文部科学省では、本年10月から来年1月までの4ヶ月間にわたって情報活用能力の調査を実施しています。小学5年生と中学2年生の児童生徒それぞれ約1000人を対象としたコンピュータを用いる調査で、初めての試みです。

 「情報活用能力」の定義づけが「初等中等教育における教育の情報化に関する検討会」でなされたのは平成18年ですが、当時から現在に至るまでの間に、ICTの環境は携帯電話に代表されるように高速・大容量化が進み、通信トラヒックは毎年約2倍の増加ペースとなりました。教育の場でも、ICTを活用した指導の実施が盛り込まれた新学習指導要領が小中学校で全面実施となり、高等学校も本年度から学年進行で実施となりました。

 現職に着任以来、いくつかの学校で授業を見学したり、教育に携わる多くの方々のお話を伺うなど「情報教育」について見聞きする機会をいただき、教育に対する「熱意」を強く感じました。同時に、どの方も非常に「話し上手」「聞き上手」と感じました。

 本年6月に政府では、「日本再興戦略」「世界最先端IT国家創造宣言」等今後の国家戦略を決定しました。いずれも日本の成長戦略の柱の一つとして「人材の育成」を掲げています。テクノロジー(Technology)の発達とともに、より複雑・多様化する情報(Information)社会の中で、新たなイノベーションを生み出し続けることは、今後の日本の成長には不可欠であり、それを可能にする優れた人材を育成・確保することは極めて重要な課題です。

 これを実現するには、技術力に加え、情報を適切に収集・判断する力を育てることが必要でしょう。更に、情報を表現・創造し、発信・伝達を適切に行い、社会に参画・貢献できる力を育てることが求められるのだと思います。私は、これらの力を含んだものが情報活用能力ではないかと思っています。

 そして、この力を支えるのが、他者を理解し、意思を疎通させるCommunicationの力、言い換えれば「話し上手」「聞き上手」である力ではないかと感じています。

平成25年度 全国視聴覚教育連盟近畿ブロック研修会 報告

プログラム

  1. 研修テーマ「デジタル時代に対応したメディアの活用」
  2. 期日:平成25年8月30日(金)午後2時から4時30分
  3. 会場:大阪市立総合生涯 学習センター 6階第2研修室
  4. 参加者数:40名
  5. 実践発表者:・兵庫県篠山市視聴覚ライブラリー 安井聡博氏(全視連専門委員)/・京都市視聴覚センター 磯野進司氏(全視連専門委員)
  6. 指導助言:広島市立大学 大学院情報科学研究科システム工学専攻助教 川本佳代氏
  7. 司会進行:照井 始(全 視連副専門委員長)
  8. 記  録:村上長彦(全 視連副専門委員長)

(1)実践事例発表

①篠山市における情報提供事業とその成果~地域コミュニティをつなぐ取組~篠山市視聴覚ライブラリー 安井聡博氏

A 現在の主な業務内容と実施事業

(1)視聴覚ライブラリー事業
 編集室の無料開放は必要に応じて指導・助言・支援を行う「自らが学ぶ」を基本。視聴覚機器の無料貸出やビデオサークルの支援も行う。

(2)地域映像配信事業
 丹波篠山インターネットTVで市内の出来事を収録し動画で配信するとともに、過去のフィルム映像をデジタルデータ化しており、多様な地域映像を蓄積・活用している。また、USTREAMを活用した中継配信や広報誌の映像版「まるいのTV」の放映を行っている。

(3)情報化推進事業
 ICTふれあいサロンを設置し、パソコン操作を通して情報活用の支援を行う。パソコン講習会はサロンスタッフによる主催。

(4)全国ビデオコンクール事業(丹波篠山ビデオ大賞)
 まちづくり、人づくりを意識した運営を行う。

B 地域映像の収集と活用
○事業の概要

 業務用ハイビジョンカメラでの収録、編集を行い、データベース化している。丹波篠山インターネットTVでの動画配信を行い、蓄積してきた映像を活用している。

C 市民へのICT支援
○事業の概要

 国主導のパソコン講習会(H13~14)の事後サポート、学びの継続性を重要視している。ICTふれあいサロンを図書館内に設置し、市民ボランティア(スタッフ)が常駐することで市民目線のサポートを実現し、多様な市民ニーズに応える体制を作っている。

D “生きがいづくり”の拠点として

(1)視聴覚ライブラリーの役割
 市民に開かれた施設として市民に還元できるよう専門性、技術力、発信力を発揮する。

○次代への提言~まとめ~

 映像資産をまちづくりとつなげ、コミュニティメディアとして推進する。また、視聴覚ライブラリーは視聴覚のオールマイティサポーターとして活動する。


左から磯野氏、安井氏、川本氏

②デジタル化の取組と生涯学習メディアの活用 京都市視聴覚センター 磯野進司氏

A 京都市視聴覚センターの活動(昭和46年に設置)

(1)園・学校にライブラリー・視聴覚機器の貸出し及び研修を実施している。

(2)生涯学習総合センター(公民館)として施設利用者へのサービス・視聴覚講座・映画会を実施している。

B 映像のデジタル化の取組

 学校でのコンピュータ導入が20年前から進められており、視聴覚センターとの連携による取り組みやすい仕組みづくりに取り組んでいる。
 ビデオの自作教材のDVD化を進めるとともに、新規購入の教材はDVDを中心にしている。
 デジタル化にあわせて、編集講座なども実施しているが、ソフトの更新が難しくなっている。

C 視聴覚機器の地域への貸し出し

 地域での視聴覚教育活動に機器の貸し出しも行っている。
 地蔵盆の時期に合わせた取り組み向けの機器の貸し出しが減少してきているが、子どもの参加者減少によるものだが、逆に16ミリを借りる例もでてきている。
 ビデオ編集講座、アナウンスコンテストなども実施している。

D 映画会の取り組み

 映画会を始めて18年目となっている。昔懐かしい映画を上映し、毎回ホール400席が満席となる人気がある。午前午後と2回上映している。
 子ども向けにはキッズシネマも実施。毎月1回アニメを上映したり、近隣の学校のブラスバンドに出演してもらうこともある。

(2)指導助言

広島市立大学大学院情報科学研究科システム工学専攻助教 川本佳代氏

「高度情報社会におけるオンラインコミュニティ」
(1)インターネットとコンピュータの現状

 ネットワーク技術とコンピュータ技術の向上により、大容量ファイルの送受信と高速処理が可能になり、同期的コミュニケーションが進んでいる。
 インターフェイス技術が発展し、誰でも容易に利用できるとともに、どこでもネットワークが利用でき、価格の低下により誰もがコンピュータを所有できるようになっている。

(2)インターネットの個人利用の拡充

 個人の好みによる情報収集が可能になるとともに、個人による情報発信、個人同士の情報交換が進んでいる。

(3)オンラインコミュニティの事例と導入の提案

 実際に大学で利用しているオンラインコミュニティの事例を元に、オンラインコミュニティの可能性について考え、導入の提案。
 地域ごとのオンラインコミュニティによって、銃民間交流や意見交換、映像情報の共有、地域情報の共同制作と外部への発信も可能になる。
 視聴覚センターの利用者サークルによるオンラインコミュニティや映像制作チーム、市民ボランティアスタッフなどにも、時間や場所に関わらず参加できることや情報やノウハウの蓄積などの効果が期待できる。

(4)オンラインコミュニティにおいて生じやすい問題

 オンラインコミュニティにおいては、個人情報を掲載してしまう、パスワードの旧友や忘れといった問題、個人的なやり取りをオンラインコミュニティ上でやってしまう、といった問題が発生しやすい。
 また、文字メディアには的確に伝えられないという限界がある。さらに著作物に関するトラブルも発生しやすい。他にもウイルスに感染したファイルやオンラインでのいじめの問題などもある。
 こういった問題を理解した上でオンラインコミュニティを活用していくことが期待される。

創立60周年を迎えた全視連 実効力のある全視連を目指して 特別研究プロジェクトで先進事例集作成等

 全視連は、「デジタル時代に対応したメディア利用」をキーワードに、従来の視聴覚メディアを大切にしつつ、ICT(情報通信技術)を活用した映像コンテンツ提供や学習機会の提供、教育メディア研修を推進し、時代に対応した視聴覚センター・ライブラリーの活性化支援を行う事業を進めています。

1 創立60周年にあたって

 本年度は、全国視聴覚教育連盟創立60周年と言う記念すべき節目の年にあたります。

 昨年度出された、全視連ビジョン策定委員会提言を基に、ICT利用やメディア研修の推進、映像コンテンツのデジタル化支援、講師派遣事業等の改善・拡充、組織間ネットワークの新たな構築等に取り組んでいます。

 振り返って見ますと、先の50周年記念事業として、「全国視聴覚教育連盟創立50周年記念誌」を刊行致しました(写真)。

 創立50周年記念誌の編集委員長を務められた故高桑康雄先生は、記念誌の中で「全視連の歩みを展望する」と題し次のように書かれています。

 “今日の多様化するメディア状況の中で、また急速に発展しつつある情報通信システムの広がりの中で、かつて視聴覚メディアとその拠点としての視聴覚ライブラリーの整備充実に焦点化した全視連の活動を、新しい生涯学習の推進に向けて、どう展開し発展させていけばよいか将来展望のカギを与えてくれるのではないか”と先見性のある言葉を残されています。

2 創立60周年記念特別研究プロジェクト

 創立60周年を迎えた今、故高桑康雄先生のまとめの言葉は、現在の全視連活動や全視連ビジョン実現第1年度事業として具現化しつつあります。つまり、本年度は、創立60周年記念事業として、従来の調査研究事業を包括した特別研究プロジェクトを立ち上げ、将来展望に基づいて進めている先進的な事業活動や計画を取り上げて、さらなる10年後の全視連、そして新たな視聴覚ライブラリーの在り方を希求した研究報告書をまとめることになりました。

3 具体的な特別研究プロジェクトの概要

 ICT社会に対応した生涯学習におけるメディア活用のための研修モデル事例集の作成公開及び、全視連加盟団体及び公立視聴覚センター等教育メディア関連組織間ネットワークシステムの構築を検討する2つのプロジェクトを次のように立ち上げ、研究を進めることになりました。

□研究プロジェクト1「メディア活用研修モデル事例調査」

・研究担当:照井 始副専門委員長、丸山裕輔委員、鷲林潤壱委員、中條専一委員  計4名

□研究プロジェクト2「組織間ネットワークシステム構築」

・研究担当:松田 實専門委員長、村上長彦副専門委員長、髙德 晃委員、出頭信二委員 計4名

 また、定例的な事業である調査研究事業については、特別研究プロジェクトの一環として、委託調査研究1「防府市におけるコミュニティメディア活用の実際」を取りまとめる事になっています。

 調査研究2についても、同じように、委託調査研究「SNSを活用した情報提供システム」を取り上げて報告書を作成する計画が進んでいます。

新教育映像利用に関する調査研究事業 参加ライブラリー決まる

 全視連が毎年実施している本事業は、生涯学習に役立つ市販映像教材として、どのような作品が必要か、視聴覚センター・ライブラリー等視聴覚教育関係施設の協力を募り、利用者が求める市販映像教材について調査研究を行い、教育映像作品の質的向上を図ることを目的として毎年実施している。
 今年度の参加ライブラリーは1施設の参加を得て、DVD2作品を対象にアンケート調査を実施し、その結果を年度末に全視連ホームページにアップする予定。

〈参加ライブラリー〉

岩手県盛岡教育事務所管内教育振興協議会

〈調査研究作品〉

  • 世界文化遺産「よみがえる金色堂」DVD・岩波映像(株)
  • 「大造じいさんとガン」DVD・ (株) 学研教育みらい

視聴覚教育功労者表彰 受賞者のことば

 既報の通り、平成24年度の第16回全視連視聴覚教育功労者は、全国より11名の方々が選出され、去る10月26日、全国大会・北海道大会において表彰式が執り行われました。本欄では受賞者の方々の中から代表して愛知県遠藤氏、山梨県小笠原氏、徳島県鉄谷氏により、受賞に際しての感想をいただきました。

「学びを変える力に」愛知県弥富市立桜小学校 遠藤 孝

 すうっと波でも引くように静かになっていく子どもたち。一点を見すえる眼、驚いて口がぽかーんと開いてしまっている子、映像の中にぐんぐん引き込まれていく。自作視聴覚教材を制作し、授業の中で活用するようになってから出会った子どもたちの表情。漠然と子どもたちを見ていた目が、ファインダーをのぞく機会が増えるたびに変化していった日々。

 37年前、フィルムセンター校の担当者になり、自作視聴覚教材の制作にも取り組んできました。当初は、養護教諭の先生方と保健に関するスライドを、平成になってからは、ビデオカメラを使って教材ビデオや卒業アルバムの制作を手がけてきました。「うわぁ、へぇー、何故だろう、そうなんだ。」と子どもの心が動く作品に仕上げていきたいという思いを抱いて、グループの仲間たちと制作してきたのです。

 平成13年に設立された海部地区自作視聴覚教材研究会の委員となり、自作視聴覚教材を制作する先生方と企画、撮影、編集についての研修を積み上げてきました。初めて作品づくりをする先生方と何回も夜遅くまで打合せをし、編集のお手伝いをした作品が文部科学大臣賞を受賞したときは、わがことのように感激したことを覚えています。

 また、平成14年から愛知県自作視聴覚教材コンクールの審査員を務めさせていただいたことは、たくさんの作品と多くの先生方に出会うことになり、自作視聴覚教材についての思いや作品制作の新たな視点をもつきっかけになりました。さらに、愛知県視聴覚教育連絡協議会中央研修会の講師を務めさせていただくことにより、「自作視聴覚教材は子どもが学びたい授業をつくるアイテム」であるという考えを得ることになりました。

 この度、私のとるに足らないような活動が、このような形で表彰されたことは、望外の幸福であり感謝の気持ちでいっぱいです。ゆっくりと、ていねいな活動を今後も続けていきます。

「今は昔、古き良き視聴覚教育の思いで」山梨県 小笠原 浩

 この度は大変名誉ある賞をいただき、先輩や仲間のお陰と感謝しながら、視聴覚教育に携わったスタート時を思い返した。私が視聴覚教育に関わったのは、教員1年目からである。初任地へ着任早々、ソニーが初めてカラー化に成功したという家庭用ポータブルビデオカメラシステムが納入されてきた。オープンリールのレコーダーは、縦・横30センチ、厚さが15センチくらいの機器で肩ににかけるとずっしりと重かった。カメラも大きいので、長く構えていると腕が疲れてしまうという扱い難さはあった。しかしそれにも増して、バッテリーで動くということで移動撮影が出来る。さらにすぐ再生でき、気に入らなければすぐに撮り直しも出来る。もちろんカラーで撮れるということで、私にとっては夢のような機器であった。早速、遠足の事前指導で活用した。知的障害の養護学校(現支援学校)の児童を、遠足で河口湖に連れていくので、観光地特有の危険箇所などを録画しておき、見せながら事前の指導をするという意図である。慣れない撮影で「ターンが早すぎる、ズームを使いすぎる」等たくさんの反省点もいただいたが、実際に授業で使用してみると、映像資料の大きな効果を実感できた。

 夏の宿泊訓練では、野外映画鑑賞会を実施した。大学時代に取得しておいた16ミリ映写機操作技術認定証のお陰で、図書館の16ミリフィルムが借りられた。宿舎の中庭へ、シーツ6枚分のスクリーンを用意し、天然クーラーの中での映画会はまた格別のものであった。また、手軽で人気のあったOHPは、カラー化や動画化を工夫しながら末長く愛用した。転任校においての公開研究会で、体育館の壁面に6m・8mのスクリーンを手作りし、全校合唱のイラストを、歌に合わせて動かしながら映し出したのも思い出深い。

 45年も前の視聴覚教育は、今や昔話となってしまった。

録画ビデオを活かした啓発から「竹田の子守唄」の故里を訪ねて… 徳島県海部郡牟岐町 鉄谷雅弘

 守りも嫌がる 盆から先にゃ雪もちらつくし 子も泣くし(以下略)

 この歌を、私が初めて耳にしたのは、四十余年も前の頃だったろうか。その哀調を帯びたメロディーから「五木の子守唄」を連想し、同じ九州大分県「竹田」─「荒城の月」発祥地─の子守唄だと、それ以降、ずっとそう思い込んでいた。この歌と再会し、認識を新たにしたのは、平成15年4月10日付けの朝日新聞を目にしたときであった。

 メディアが消した「名曲」、根拠なかった「自己規制」、との記事が掲載され、その発祥が、関西の、ある被差別地域であったことを教えられた。

 平成16年11月13日、BS2で「にっぽん子守唄紀行〜心のふるさとを探して〜」が放映、録画する。程なくして、某月刊誌に「部落に生きる『私たちの叫び』『竹田の子守唄』のNHKドキュメンタリー」の見出しで、この「紀行」中に映っている、この歌の今が紹介され、「竹田の子守唄」にかける人たちの思いに、私自身もようやく辿りつくことになる。

 平成18年度、それまで取り組んでいた牟岐公民館「分館人権研修」で、私たちは、この録画によるビデオフォーラムを展開。一方、「郡内人権研修会」では、「竹田」の人たちが、初めてこの歌の公開に取り組んだ「第6回ふしみ人権の集い」を、この録画を通してアピール。翌年2月の郡人協「県外研修」では、「第12回」への参加が賛同され、「竹田」の故里を訪れる年来の夢が、ようやく実現。その4年後の「第16回」にも、郡内の仲間らと再度、この地を訪れることになる。

 因みに、19年度からはNHKSP、にっぽん家族の肖像シリーズ「母と子 悲しみの淵から」を携えて啓発に取り組むことに。